ORIGINALS.

ORIGINALS公式テキスト 第1章 なぜ構造化して考えるのか

作成日:2026-09-03対象:社員・在宅メンバー

この章で学ぶこと

この章では、次の3点を習得することを目標にします。


「考えたつもり」と「考えた」の違い

思いつきの羅列とは

私たちは日々、多くの場面で「考えた」と感じています。しかし、実際には思いついたことを順番に並べているだけのケースが少なくありません。たとえば、「売上が落ちているから広告を増やそう」「競合が強いから価格を下げよう」といった思考は、原因を調べず、選択肢を比較せず、直感に飛びついています。これを思いつきの羅列と呼びます。

思いつきの羅列は時間効率が良さそうに見えますが、的外れな打ち手につながりやすく、後から「なぜその結論に至ったのか」を説明できません。チームで作業するときに認識のズレが生じやすく、レビューや修正のコストが増えます。

思いつきの羅列が起きやすいのは、問いを立てる前に答えに向かってしまうからです。「リードが減っている」という事実を受け取った瞬間に「広告を増やそう」という行動が浮かぶのは、人間の脳が過去の成功体験や印象に引きずられやすいためです。これを「確証バイアス」と呼ぶこともありますが、名前を知っているだけでは防げません。防ぐためには「まず問いを立て、次に構造で分解する」という手順を身につけることが必要です。

「構造化」の定義

本テキストでは、構造化を次のように定義します。

構造化=全体を漏れなく分け、要素の関係を明らかにすること

「漏れなく分ける」とは、取り上げていない論点が残らないようにすることです。「要素の関係を明らかにする」とは、各要素がどのような因果・包含・順序の関係にあるかを示すことです。この2つが揃って初めて、考えた内容を他者と共有でき、行動の根拠として使えます。

構造化された思考と思いつきの羅列の最大の違いは再現性です。構造化されていれば、別の人が同じ手順を踏むと同じ結論に近づけます。思いつきは属人的であり、再現できません。

もう一つの大きな違いは説明可能性です。構造化された考えは「なぜその結論に至ったのか」を順を追って説明できます。上長や取引先から「その根拠は?」と問われたとき、思いつきベースの結論は答えられず、構造化ベースの結論は「データを分解したところ、この要素だけが変化していたからです」と答えられます。この差が、仕事の信頼性に直結します。


ビフォーアフター実例

実例1:週次報告(TikTok Shop案件)

TikTok Shop運用代行の担当者が、週次の進捗を上長に報告する場面です。

BAD EXAMPLE
思いつきの報告
今週は動画を6本出しました。再生はまあまあで、いくつかはバズりかけました。コメントも前より増えていたと思います。来週も頑張ります。
GOOD EXAMPLE
構造化された報告
結論:GMVは目標比80%(※数値は架空の例です)。
原因:動画経由の流入が前週比▲30%。フックの引きが弱く、3秒離脱が増加。
来週の打ち手:フック改善のABテストを3本実施。テスト軸は冒頭の問いかけ有無。
図1:週次報告のビフォーアフター。良い例は「結論→原因→打ち手」の順で1段落に収まる。

悪い例は情報量が少なく、上長は「再生数は何回か」「来週の具体的な行動は何か」を都度確認しなければなりません。良い例は結論が最初に来て、原因・打ち手がセットで示されています。上長は30秒で判断できます。

実例2:問題解決(HP制作リード減少)

AI×人のHP制作事業で、月間のリード獲得数が前月比半減しました。打ち手を考える場面です。

BAD EXAMPLE
思いつきの打ち手
リードが減っているので広告を増やしましょう。SNSも強化して、インフルエンサーにも声をかけてみます。あとはキャンペーンも考えましょう。
GOOD EXAMPLE
分解由来の打ち手
分解:リード数=表示数×クリック率×CV率
確認:表示数・クリック率は横ばい。CV率だけが前月比▲52%(※数値は架空の例です)。
結論:フォームのどこかで離脱が増えている。フォーム改修を最初に行う。広告費追加はCV率回復後に検討。
図2:問題解決のビフォーアフター。良い例は指標を掛け算で分解し、変化した要素だけに絞って打ち手を決める。

悪い例は広告・SNS・インフルエンサー・キャンペーンと思いつきが並びます。しかしデータを見るとCV率だけが落ちており、表示数を増やしても意味がありません。原因を特定してから打ち手を決めることが、コストと時間の無駄を防ぎます。


仕事が変わる3つの場面

構造化して考える習慣が身につくと、次の3つの場面で仕事の質が変わります。

①報告が短く伝わる

結論を最初に置き、理由・根拠・打ち手の順に積み上げる形(ピラミッド型)で話すと、相手は最初の一文で話の着地点を理解できます。5分かかっていた報告が1分で済み、会議の消費時間が大幅に短縮されます。第5章でピラミッド原則として詳しく扱います。

「結論から話す」というのは、多くの人が頭では理解しているものの、実際にやると難しい習慣です。長年「まず経緯を説明してから結論を述べる」という報告スタイルで育ってきた場合、最初から変えるには意識的な練習が必要です。本テキストの第6章では、報告・提案・問題報告の3種類のテンプレートを使って、反射的に構造化した文章が書けるようになることを目標とします。

②原因に届く打ち手が出る

指標を掛け算や足し算に分解すると、変化している要素と変化していない要素が分かります。変化している要素にだけ資源を投じることで、打ち手の命中率が上がります。「とにかくやってみる」から「仮説を持ってテストする」に移行できます。第3章・第4章でロジックツリーと仮説思考を扱います。

ここで重要なのは「変化していない要素には手を付けない」という判断です。実例2でCV率だけが落ちていたとき、表示数や広告費を増やしても意味がありません。それどころか、表示数を増やすための広告費を投入した結果、CV率の低いページへの流入が増え、費用対効果がさらに悪化するという逆効果が起きることもあります。原因を特定してから打ち手を決めることは、コストを守るための最低限の作法です。

③指示がなくても次の問いを自分で立てられる

問題を構造化すると、「まだ分かっていないこと」「次に確認すべきこと」が自然に見えます。上長から指示を待つのではなく、自分で次のアクションを設定して動けるようになります。これが組織の「自走力」につながります。第4章のイシュー設定で扱います。

「次の問いが自分で立てられる」ということは、単に仕事の効率が上がるだけではありません。上長の思考の一歩先を読んで動けるようになると、任せてもらえる仕事の範囲が広がります。ORIGINALSが在宅・リモートの体制で機能するためには、「指示を待って動く」ではなく「問いを立てて動く」メンバーの割合が高いことが前提条件になります。この検定は、そのための思考基盤を全員で揃えることを目的としています。


この検定制度の全体像

本テキストは、ORIGINALS社内検定(3級・2級・1級)の公式テキストとして位置づけられています。このテキストを読めば3級に受かる構造になっています。

級形式範囲受験対象
3級(知識)選択式・短答(20問・45分)本テキスト全6章全員
2級(ケース)記述式ケース答案(90分)テキスト+月次演習希望者
1級(実案件)実案件レビュー審査自己実績の提出・審査今後定義

各級の関係は「知識を持っている(3級)→ケースで使える(2級)→実仕事で証明できる(1級)」という段階です。初年度は処遇への連動なしで運用します。2年目以降に評価・等級への連動を判断する予定です。

3級の出題範囲は本テキストの6章と1対1で対応しています。各章末の問題をすべて解けるようになれば、3級合格ラインに達します。


章末問題(5問)

問1

次の報告文を読み、最も大きな問題点を選んでください。

「今週は動画を6本出しました。再生はまあまあで、来週も頑張ります。」

  1. 動画の本数が少なすぎる
  2. 来週の具体的な行動が示されていない
  3. 結論(成果の評価)が先に示されていない
  4. 「まあまあ」という表現が曖昧すぎる

解答:3

解説: この報告では上長が最も知りたい「今週の取り組みは成功だったのか」という結論が示されていません。「再生はまあまあ」という感覚的な表現では判断の材料になりません。2や4も改善余地はありますが、報告の構造として最も重大な欠落は「結論が先にない」点です。


問2

「構造化」の定義として最も正しいものを選んでください。

  1. なるべく多くの情報を集めて、詳しく説明すること
  2. 全体を漏れなく分け、要素の関係を明らかにすること
  3. 思いついた順に素早くアイデアを書き出すこと
  4. 上長に指摘されたポイントを直して再提出すること

解答:2

解説: 本章で定義した通り、構造化は「全体を漏れなく分け、要素の関係を明らかにすること」です。1は情報量の多さであり、構造化ではありません。3はブレインストーミングの手法で、構造化の前段にあたります。4は修正作業であり、思考の構造とは無関係です。


問3

リード獲得数が減少した原因を調べるとき、構造化された思考に最も近いものを選んでください。

  1. すぐに広告予算を増やして様子を見る
  2. リード数=表示数×クリック率×CV率に分解し、どの指標が変化したかを確認してから打ち手を決める
  3. 過去に効果があった施策を再度実施する
  4. 競合他社が何をしているかを調査して同じことをする

解答:2

解説: 選択肢2は指標を掛け算で分解し、変化した要素を特定してから打ち手を決めています。これが本章の実例2で示した構造化アプローチです。1・3・4はいずれも原因の特定より先に行動を決めており、思いつきや過去の経験への依存であって、構造化された問題解決ではありません。


問4

報告や提案の冒頭に置くべきものは何ですか。短答で答えてください。

解答:結論

解説: ピラミッド原則(第5章)でも扱いますが、ビジネスの報告・提案では「結論→理由→根拠・詳細」の順で話すことが基本です。冒頭に結論を置くことで、相手は全体の着地点を把握した上で詳細を聞けます。逆に結論を最後に置くと、相手は「で、結論は何?」と待ち続けることになり、認知負荷が高まります。


問5

本章の実例2では、リード数を3つの要素の掛け算で分解しました。その式を書いてください。

解答例:リード数=表示数×クリック率×CV率

解説: この分解式はウェブマーケティングでよく使われる基本的な構造です。表示数=検索結果や広告でリンクが表示された回数、クリック率=表示されたうちリンクをクリックしてサイトに来た割合、CV率=サイトに来た人のうち問い合わせを完了した割合です。どの要素が変化したかを確認することで、打ち手を絞り込めます。

次章(第2章 MECEと切り口)では、「漏れなく分ける」を実現するための道具として、MECEと切り口3系統を扱います。